研究概要 |
脳卒中の発症と予後に密接に関与する血液脳関門(Blood-brain barrier ; BBB)に対するスタチンの作用は未だ判明していない。そこで、我々はラット脳より分離した脳血管内皮細胞を用いてin vitro BBBモデルを作製し,ピタバスタチンがBBBに与える影響を検討した。(結果)ピタバスタチン投与により,経内皮電気抵抗(TEER)は有意に上昇し,その効果は10^<-8>Mで最大となった。ピタバスタチン投与群では,蛍光免疫染色にてクラウディン-5は細胞膜上に強く発現しており,ウェスタンブロッティングでもその蛋白量レベルは有意に上昇していた。しかし,クラウディン-5のmRNAレベルに変化は認めなかった。ピタバスタチン投与によるTEER上昇は,GGPPを添加することで消失したが,FPP投与では消失しなかった。今回の結果より,ピタバスタチンが脳血管内皮細胞においてクラウディン-5の発現を介してBBB機能を強化していることが明らかとなった。その機序として,メバロン酸カスケードの中間代謝産物であるイソプレノイド群の中でもGGPPが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。上記内容を国際学会で発表するとともに、学術論文として発表した。更に今年度は、in vitro BBBモデルを用いて、高血糖状態やadvanced glycation end products(AGE)を投与し糖尿病の病態を再現することで内皮細胞障害を評価した。虚血再灌流後の経内皮電気抵抗はAGE群(400μg/ml)ではコントロール群に比べ6時間後に40%、24時間後では30%の低下を示した。現在、in vitro BBBモデルを用いて虚血負荷、高血糖負荷など様々な病態モデルを作製し、脳卒中治療に有益な薬剤の検索を行っている。
|