研究概要 |
大脳基底核は脳幹や脊髄などへ出力繊維を投射する重要な神経回路拠点でもあり,運動調節や体性感覚統合および学習や記憶に密接に関与していると考えられているが,その神経回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.ヒト成熟脳でも従来考えられていた以上に可塑性を備えていることが臨床上で認識されるようになり,脳卒中片麻痺患者の機能回復訓練においては脳の可塑性を予測して積極的に治療するconstraint induced movement therapyが実践されはじめ,良好な成績を示して注目されている.大脳皮質-基底核閉鎖回路障害におけるシナプス可塑性を解析するため,下記の研究を行った. 脳血管性障害や腫瘍性病変およびパーキンソン病などの大脳基底核障害患者,さらに頭部外傷や脳血管性障害,腫瘍性病変などによる前頭葉運動関連野障害の患者において,経時的に頭部MRIを撮像した.また,非侵襲的高機能探索分子プローブである^<11>C-diacylglycerolおよび^<18>F-fluorodopaをトレーサとして用いた経時的PET検査を施行し,運動関連領野-大脳基底核回路における機能異常をシナプス機能の観点から経時的に画像化した.また,^8F-fluorodeoxyglucoseおよび^<15>O-gasをトレーサとして用い,同時期の脳循環代謝も評価した. これらの患者における神経症状の推移をビデオ画像などで客観的に記録するとともに神経症状の推移を記載した. 可視化したシナプス機能の推移と脳循環代謝の推移を後方視的にMRI画像と比較した.また,神経伝達物質画像と脳循環代謝画像を経時的に神経症状の推移に照合し,あわせて比較検討することにより,運動関連領野-大脳基底核神経回路網と視床・黒質・上丘および橋被蓋などの機能的回路網を巨視的に解析している.
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