研究概要 |
ヒト大脳基底核疾患におけるシナプス機能制御機能を非侵襲的分子画像を用いて経時的に把握し,その神経制御機構や可疎性を評価するために,以下の研究を行った. 【方法】 #1.ヒト大脳基底核障害,さらにヒト前頭葉運動関連領野障害における神経回路網の機能的変化を,情報伝達系の観点からPETにより非侵襲的にリアルタイム計測して可視化し,運動関連領野-大脳基底核回路における機能異常をシナプス機能の観点から同定する. #2.神経症状の推移を記録・解析し,可視化したシナプス機能の推移とretrospectiveに照合して解析することにより,神経回路可塑性のエビデンスをin vivoで解析する. #3.神経伝達物質画像と脳循環代謝画像を経時的に比較検討することにより,運動関連領野-大脳基底核神経回路網と視床・黒質・上丘および橋被蓋などの機能的回路網を巨視的に解析する 【結果】 ^<11>C-DAGによるPET検査で,亜急性期(発症1-2ヵ月)に大脳皮質連合野に^<11>C-DAGが極めて強く取り込まれる現象が確認され,この強い取り込み(radioactive spot)は病巣から離れた部位に出現し,限局した領域に出現した.また,これらが出現する領域は大脳皮質連合野の前頭前野に頻度が多いことがわかった.慢性期になるとそれらは消失するため,このradioactive spotは大脳皮質連合野にあらわれる代償的な修復過程を反映しているものと考えられた.すなわち成熟脳での再構成(reorganization)は連合野を介し行われる可能性が示唆された.この現象は症状改善などの後に減弱することから可塑的機構を反映していることが考えられた.
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