頸部内頚動脈狭窄症は虚血性脳血管障害の重要な要因の一つである。頸部頸動脈狭窄症に対する主な標準的外科治療に、頸動脈内膜剥離術があるが、術前に脳循環予備能が障害されている高度病変の場合、術後合併症の一つである過灌流症候群発の発生率が有意に上昇することが問題となっている。今回我々は、頸動脈内膜剥離術中経時的に経頭蓋的脳表酸素飽和度を測定し、頸動脈一時遮断に伴う虚血性障害の程度と、遮断解除後に起こる過灌流とが有意に相関することを見いだした。 また、これら脳血流と認知機能の関連を調査した検討では、頸動脈内膜剥離術後の認知機能の改善は、術前に認めていたcrossed cerebellar hypoperfusionの解消とI-123 iomazenilの大脳皮質神経細胞への取り込みの改善と有意に相関していることを確認した。I-123 iomazenilは大脳皮質神経細胞のベンゾジアゼピンレセプターに吸着するため、I-123 iomazenil SPECTによる集積低下像は神経密度低下や神経細胞活動低下を反映し、不可逆的なものと考えられていた。しかしながら、本研究では障害されていた脳血流を改善させることにより、可逆的な神経障害の機序が存在することを初めて明らかにした。
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