研究概要 |
マグネシウム溶液による神経細胞保護作用を検討するために,ラットを用いた海馬遅発性神経細胞死モデル(Pulsinelli model)を用いて,マグネシウム溶液の脳内局所注入にて神経細胞死が抑制されるかについて検討した。第1日目に10mmol/LのMgSO4を含むRinger液を充填したミニ浸透圧ポンプ(Alzet, MINI-OSMOTIC PUMP, Model 2001, 1μL/h)を背部に埋没し,前頭骨に空けた小孔から注入カテーテルを一側の海馬CA1領域付近に留置した。次に両側椎骨動脈を切離した後,両側総頚動脈に糸を掛けて皮下に埋没した。翌日,両側総頚動脈を10分間clipにて遮断し,全脳虚血を負荷した。実験中は体温と鼓膜温を測定し,低体温に陥らないように注意した。7日目にラットを還流固定し脳を摘出し,パラフィン固定後に脳冠状断切片を作成した。HE染色を施行し,海馬CA1領域の神経細胞の生細胞数を顕微鏡下にて測定し,mm単位当たりの生細胞数として算出した。また,同時にFluoro-Jade B染色を施行し,蛍光顕微鏡を用いて海馬CA1領域の神経細胞の死細胞数を測定し,mm単位当たりの死細胞数として算出した。マグネシウム溶液の脳内局所注入側と反対側の非注入側でそれぞれの,生細胞数と死細胞数を比較検討した。その結果,生細胞数は注入側では119±48/mm,非注入側では,37±21/mmと注入側で有意(p<0.01)に多く,また死細胞数は注入側では53±57/mm,非注入側では158±49/mmと非注入側で有意(p<0.01)に多かった.以上より,マグネシウム溶液の脳内注入にて海馬遅発性神経細胞死を明らかに抑制しえる脳保護作用が判明し,現在濃度依存性について検討中である。
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