研究概要 |
1. マグネシウム溶液による脳血流量(CBF)の影響を見るために、10mmol/LのMgSO4を含むRinger液を充填したミニ浸透圧ポンプ(Alzet, MINI-OSMOTIC PUMP, Model2001,1μL/h)をrat背部に埋没し、持続的にマグネシウム溶液を大槽に注入し7目目に[14C]iodoantipyrine静脈内投与を行い、定量的autoradiogramを作製しCBFを測定した。その結果、マグネシウム投与群ではratは傾眠傾向を認めるもののCBFは1.28ml/g/minであり非投与群の1.26ml/g/minと差が無かった。 2. マグネシウム溶液による神経細胞保護作用を検討するために、ラット海馬遅発性神経細胞死モデル(Pulsinelli-model)を用いて、マグネシウム溶液の脳内局所注入にて神経細胞死が抑制されるかについて検討した。第1日目に0,1,または10mmol/LのMgSO4を含むRinger液を充填したミニ浸透圧ポンプを背部に埋没し、注入カテーテルを一側の海馬CA1領域付近に留置した。10分間の全脳虚血を負荷した。7日目にラットを還流固定し脳を摘出し、パラフィン固定後に脳冠状断切片を作製した。HE染色を施行し、海馬CA1領域の神経細胞の生細胞数を顕微鏡にて測定し、mm単位当たりの生細胞数として算出した。また、同時にFluoro-Jade B染色を施行し、蛍光顕微鏡を用いて海馬CA1領域の神経細胞の死細胞数を測定し、mm単位当たりの死細胞数として算出した。マグネシウム溶液の脳内局所注入側でそれぞれの、生細胞数(HE)と死細胞数(FJB)を比較検討した。その結果、生細胞数は0,1,10mmol/Lで、それぞれ37±10,82±36,176±61とマグネシウム濃度によって有意(p<0.001)に増加した。また死細胞数は0,1,10mmol/Lで、それぞれ158±32,126±39,21±33と有意(p<0.001)に減少した。以上より、マグネシウム溶液の脳内注入にて海馬遅発性神経細胞死を抑制しうる脳保護作用が判明した。
|