研究概要 |
(目的)平成22年度の本研究にて、Rat一過性脳虚血負荷による遅発性海馬CA1錐体細胞死モデルにMgSO4溶液を一側海馬に持続注入することによって、この神経細胞死が抑制されることを報告した。今年度は、この脳保護作用が脳循環代謝の抑制によるものかについて、局所脳血流量(rCBF)および局所脳グルコース代謝(rCMRglu)の面から検討した。 (方法)第1日に浸透圧持続注入ポンプ(Alzet,1μL/h)をSDrat背部に埋没し、左海馬CA1直上に注入針を留置した。これにより10mmol/L MgSO4溶液を左海馬に持続投与した。第5日に局所脳血流量(rCBF)を測定すべく14C-iodoantipyrineを50μCi静脈内投与し、Sakurada法にて定量的autoragiogramを作成しrCBFを19か所にて測定した(N=6)。また同様に、第5日に局所脳グルコース代謝率(rCMRglu)を測定すべく14C-deoxyglucoseを50μCi静脈内投与し、Sokoloff法にて定量的autoradiogramを作成し19か所にてrCMRgluを測定した(N=6)。 (結果) rCBFの検討では、小脳半球、頭頂葉、内包、barrel領域、pyniform cortexにて有意の左右差を認めたが、左CA1では0.72±0.14ml/min/g、右CA1では0,86±0.12ml/min/gとCA1領域ではrCBFの有意の差は認めなかった。rCMRgluの検討では、小脳半球および脳梁にて有意の左右差を認めたが、左CA1では0.50±0.05μmol/min/g、右CA1では0.56±0.06μmol/min/gとCA1領域ではrCMRgluの有意の差は認めなかった。 (結論>Mg注入による海馬CA1領域の脳保護作用は脳循環代謝抑制作用とは関係がない可能性がある。
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