研究課題
悪性脳腫瘍の予後は近年の画像診断・手術技術などの進歩にもかかわらずほとんど改善しておらず、新たな治療法の開発が切望されている分野である。親水性ポリマーからなるブロック共重合体に疎水性の化学療法剤を結合させると、水中で安定な高分子ミセルを形成する。血管内に投与された高分子ミセルは長時間血管内に停留し、腫瘍部で透過性の亢進した新生腫瘍血管を経て病変部に集積、その後徐々にユニットポリマーに解離してコアの薬物を放出し効果を現す。高分子ミセル製剤はこのように抗癌剤のDrug Delivery System(DDS)として使用することができる。高分子ミセルの腫瘍特異的集積は、EPR効果(EPR : Enhanced Permeability and Retention)によると提唱されているが、実際には腫瘍選択性の改良のために抗体を結合型させたミセルなどの開発も行われている。高分子ミセル製剤が実際に脳腫瘍治療にとって実用的かを検証するため、マウス脳腫瘍モデルを用いて本研究を行った。pH反応型高分子ミセル化学療法剤の調製:平成21年度はpHの変化に反応して解離しコアの薬剤を放出する高分子ミセルの合成を分担研究者の片岡らが担当した。本ミセルをアドリアマイシンに応用した薬剤は毒性が著しく軽減していることが、複数のマウスモデルで確認されている。Dach platinミセルに関しても、毒性軽減の解決方法としての、内核と薬剤の間の化学結合を変化させることによる、腫瘍細胞内の物理的環境(低pH)などに反応して解離するミセルを設計や、粒子径をより小さく管理することの効果を引き続き検討した。脳内腫瘍における抗腫瘍効果:本年度は、はU87MG(ヒト神経膠腫)、SR-B.10A(マウス神経膠腫)やLL2(肺癌)、C26(大腸癌)細胞をマウス脳内に接種し、腫瘍の脳組織内への浸潤の程度や腫瘍血管構築について検討を行い、モデルとしてU87MGおよびSR-B.10Aが実際にヒト悪性神経膠腫に類似していることを確認した。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
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