研究課題
〔本年度の実績の概要〕研究分担者の片岡のもとでミセル製剤の合成・調整を行ない、粒子径の評価などの後に供給されたミセル製剤を研究代表者の稲生のところで実験に使用した。本年度は、ミセル製剤の毒性(体重の変化と生化学データおよび病理額的検討)と、腫瘍組織内分布の評価を行った。〔改良型Dachplatinミセル化学療法剤の調整〕本年度は改良型Dachplatinミセルの評価と、血管透過性薬剤併用による腫瘍内薬剤分布の検討を引き続き行った。Dachplatinミセルは、血管内停留中の薬剤自然放出によると考えられる毒性が残存していたが、外層の高分子の設計を変更し、ミセル径を40nm程度に縮小することで肝への非特異的取り込みが軽減すると考えられ、この改良型dachplatinミセルの供給を片岡らから受け、組織内分布をPt原子に注目することで測定した。一方、ミセル径70nmとやや大きいミセルに関しては、TGF-β阻害剤やその他のkinase阻害剤との併用することによって、ミセルの腫瘍内滞留性が改善するかを検討した。TGF-β阻害剤やその他のkinase阻害剤の一過性使用により、血管透過性が一時的に増加し、高分子薬剤の腫瘍内到達が増加することが示せたものの、間質の影響を受けやすい皮下腫瘍モデルでは少しではあるが併用の効果が表れやすかったのに対し、脳内腫瘍モデルでは、皮下腫瘍の結果から予想されていたほどの効果は得られず、腫瘍経辺縁部ので薬剤集積増加にとどまった。in vivoの治療効果に関しては、分担研究者片岡らの協力を得て、in vivo imagingの手法を用いて薬剤の集積の定性的評価を行った。これらの腫瘍内集積の改善はしかし、脳腫瘍の治療効果の改善に直結するin vivo実験結果には至らなかった。この点については今度さらなる研究が必要であることが示唆される。
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Cancer
DOI:10.1002/cncr.27372
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