研究課題
本研究の目的は、MRI陰性FDG-PET陽性海馬を有する難治性側頭葉てんかん患者の病態を解析し、発作抑制効果および記銘力障害の面から、最適の外科治療法を考案することである。海馬、海馬傍回以外に脳腫瘍や血管性病変を有する症例群と、器質性病変を有しない患者群の両者を対象とした。術前画像検査としては、MRIに加えFDG-PETを行い、殆どの患者で中枢性ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬のflumazeni1(FMZ)-PETを施行した。術中には海馬白板から直接皮質脳波記録を行い、海馬温存あるいは切除術の指標とした。また切除術は海馬切除と海馬多切術に分けた。1)海馬でスパイクを認めず海馬を温存した6例は全例Engel Class Iと良好な成績で、3例で抗てんかん薬を中止できた。2)海馬でスパイクを認めた7例中1例で海馬切除しEngel Class Iと良好な成績であった。高齢なため海馬を温存した2例は1例が多剤併用でEngel Class Iで1例はEngel Class IIIであった。3)海馬を温存した8例は術後の記銘力低下を認めなかった。4)海馬多切術は、海綿状血管腫4例と良性脳腫瘍1例の計5例に施行し、全例Engel Class Iと良好な成績で、3例で抗てんかん薬を中止した。海馬多切術を施行した5例では術2週間目に遅延再生の低下を認めたが、半年、1年後には回復し、2年目には記銘力障害は認めなかった。このことから海馬多切術によるてんかん治療は、少なくとも脳腫瘍や海綿状血管腫患者に伴う側頭葉てんかんでMRI陰性FDG-PET陽性海馬を有する患者の重要な治療法であると考えられた。
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