本研究では、高度な画像融合技術の開発を目指して、術中の脳変形を伴った画像と、手術前の画像とを融合する技術の開発を行っている。平成22年度は、研究2年目として、以下のような研究を行った。 すでに研究ステップ(1)「変形フュージョン」プログラムの作成および研究ステップ(2)生成画像の精度評価システムの作成を行っており、これに基づいて、本年度は研究ステップ(3)の本格的実験に移った。 研究ステップ(3):本技術の大きな目的の一つである術中の錐体路の変位予測に関する実験を本格的に行った。術前T1強調画像に対して、変形の加わった術中T1強調画像へと「変形フュージョン」操作を行った。次いで、この変形フュージョンアルゴリズムを用いて、術前のDTI画像をもとにして、トラクトグラフィーの変形操作を次の方法で行った。すなわち、あらかじめトラクトグラフィーを術前画像上で行い、これをT1強調画像上へとオブジェクトとして描写する。次いでT1強調画像ベースで変形を行いトラクトグラフィーの変形を得る方法である。高磁場術中MRIでの手術例において、術前画像をもとに「変形フュージョン」により術中の錐体路を推定し、これを、術中MRIによる術中トラクトグラフィーと比較検討して、錐体路の推定が正しく行われたかを評価した。錐体路は症例によって、内側方向への変位がみられる場合と、外側方向へと変位する場合とが確認されたが、これらの変位方向を「変形フュージョン」技術により正しく推定できることがわかった。今後は定量的な検討を更に加える必要がある。
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