研究課題/領域番号 |
21591870
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
香川 尚己 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50444542)
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研究分担者 |
保仙 直毅 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (10456923)
橋本 直哉 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90315945)
吉峰 俊樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00201046)
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キーワード | 腫瘍幹細胞 / 悪性脳腫瘍 / 分子標的薬剤 / 腫瘍発生 / 治療耐性 |
研究概要 |
悪性神経膠腫において腫瘍幹細胞に特異的な新規細胞表面マーカーを同定することで腫瘍幹細胞を純化および濃縮する技術を確立した。さらに、細胞生物学的な解析を行い、この分子の悪性神経膠腫における機能的役割について解析した。(1)悪性神経膠腫から採取した腫瘍細胞をflow-cytometryにてCDl33陽性群と陰性群に分離し、microarray法を用いて解析したところ、CD166/Activated leukocyte cell adhesion molecule (ALCAM)という分子を同定した。ALCAM陽性細胞はsphere形成能が高く、ALCAMは腫瘍幹細胞成分をより濃縮することが確認された。(2)U87MG及びU251を用いALCAM knock down細胞株を用いin vitroでの浸潤、増殖能の検討、免疫不全マウスへの投与を行ったところ、U87MG ALCAM knock down株では、コントロール群と比して浸潤が促進されていた。(3)ALCAMのisoformであるsoluble ALCAMの強制発現株を作成し、同様の実験を行ったところ、コントロール群と比して著明な腫瘍形成が確認された。その一方で腫瘍血管新生については抑制されていた。(4)当院で治療を行った、IDH1変異のあるgrade2から4までの神経膠腫35例と、IDH1変異のないglioblastoma (GBM)39症例を対象として、免疫組織化学法によるALCAM発現と予後との相関について統計学的手法を用いて検討したところ、ALCAM陽性率はWHO gradingと正の相関を示し、更に、IDH1変異のないGBMでは、ALCAM高発現群のOSとPFSは低発現群と比べて低下していた。(5)総括すると、ALCAMは悪性神経膠腫において腫瘍浸潤や腫瘍血管新生などの治療抵抗性獲得に関係し、予後不良因子として働いている可能性が示唆された。Soluble ALCAMを治療標的とする治療が検討されるべきであると考えられた。
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