研究概要 |
神経膠芽腫は最も悪性の癌の一つであり、手術による摘出後に放射線・化学治療を加えた集約的治療を行っても平均生存期間は未だ約1年である。この治療が困難な神経膠芽腫の新規治療法の確立に向け治療標的の探索が本研究の目的である。神経膠芽腫幹細胞を浮遊培養法で濃縮し、マイクロアレイを用いた遺伝子の発現解析により、神経膠芽腫幹細胞の細分類を行い、治療標的の探索を行なう計画である。 平成22年度の主な研究目標は引き続きヒト神経膠芽腫組織からの癌幹細胞の樹立であった。癌幹細胞は浮遊培養法で濃縮する計画で、手術により摘出したヒト神経膠芽腫組織に酵素処理を行ない細胞をばらばらにし、浮遊細胞としてEGFとFGFを含んだ無血清培養液、GFとFGFを含まない10%血清入り培養液、さらにこれら2つを半量ずつ混ぜた培養液中で培養を行うことで、癌幹細胞の樹立を試みている。これまでに約15個の細胞株を樹立できた。これらの細胞株の腫瘍形成能を確認するため、5個の細胞株に関しては、それぞれの細胞株に対して4匹のヌードマウスに1,000個ずつ移植したが、現在のところ3細胞株で腫瘍形成を認めている。さらに、腫瘍形成能確認のために、移植細胞数を10,000個に増やすことと、ヌードマウスより移植細胞が腫瘍形成しやすいNOD-SCIDマウスを購入し、移植実験を継続して行なっている。 培養開始時は増殖し浮遊細胞塊を形成するものであっても、培養を続けると増殖能が徐々に落ち継代できないものも存在する。至適培養条件の検討は今後の課題の一つである。 これまでに3細胞株は腫瘍形成を確認できており、分化能と増殖能など癌幹細胞の基本的な機能解析も継続して行なっている。
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