研究概要 |
中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)治療に重要な役割を占める化学療法剤である、テモゾロミド(TMA)及びMetotrexate(MTX)の薬剤感受性に関わるマーカー候補であるMGMr遺伝子プロモーターのメチル化、mRNA発現、蛋白発現、reduced folate carrier(RFC)遺伝子のプロモーターのメチル化、mRNA発現について検討し、さらにPCNSLを遺伝子学的サブタイピングした上で、化学療法剤の効果、治療成績、予後との関係について検討し、新たな治療法の開発に向けての基盤的研究を行うことを本研究の目的としている。本年度も昨年度に引き続き、PCNSL症例3の腫瘍組織よりDNAを抽出し、MGMr遺伝子に対するメチル化感受性高解像能融解曲線分析法にて、MG辨遺伝子のプロモーターのメチル化の有無を解析した。Bisulfite処理した各DNAサンプル0.2μgを最終容量20μlに溶解した。メチル化スタンダードは、100%メチル化コントロールDNAを100%非メチル化コントロールで希釈して100%から0%まで10%毎に段階希釈したサンプルを準備した。PCR primer はWojdaczらの論文に従ってデザインした。DNAインターカレート色素を含むLightCycler480High Resolution Meltingマスターミックスを使用し、PCRの条件はSYBRGreenI検出フォーマットにて、95℃10分X1サイクル、95℃10秒-60℃20秒-72℃20秒X45サイクル、高解像能融解曲線分析法のステップとして、95℃1分、50℃1分、72℃5秒反応させた後、95℃へ向かって1℃につき30回連続して蛍光を取得した。昨年より症例が増え、45例中MGMrのメチル化が確認できたのは23例であった。メチル化の程度は5%から100%まで存在した。再発時にTMZを導入した5例中4例はMGMrのメチル化がみられ、これらの症例では治療に奏功した。一方MGMTのメチル化がみられない1例ではTMZの効果を認めなかった。MGMTのメチル化はTMZの効果を予測する因子となりうる可能性が示唆された。MTX療法の感受性に関与する可能性があるRFC遺伝子のタンパク発現を免疫組織化学染色にて検討した。発現を検討できた26例中、RFCの発現を認めたのは9例で、このうち初期MTX療法に効果を示した(CR,CRu)のは7例(78%)であり、RFCの発現を認めない17例中、初期MTX療法中治療抵抗性を示したもの(SD,PD)は12例(71%)であった。以上よりRFCのタンパク発現は初期MTX療法の感受性に関係する可能性が示唆された。現在、Fas,Bc12の発現を免疫組織染色を行っており、今後、治療効果や予後との関わりを検討する予定である。
|