初年度に脳の拡散テンソルMRIより生成した軸索画像に段階的に画像処理を加えたものを脳病変の治療に統合する画像処理システムを構築し、前年度には軸索画像を手術中ナビゲーションシステムに統合するシステムを構築した。このシステムを脳腫瘍の患者17例に適用し、13例で錐体路を、4例では視放線を手術中ナビゲーションに統合した。錐体路近傍の腫瘍の患者では同時に術中に錐体路の電気刺激を併用し結果、画像システム上で錐体路との距離が5mmの位置においては画像上の錐体路を5mAにて電気刺激することで上下肢の筋電図が検出され、距離が10mmの位置では10mAの刺激で筋電図が検出された。すなわち、電気刺激の強度と距離に一次的な相関が認められ、この現象は錐体路との距離が20mm程度まで認められた。なおかつ、画像システム上の錐体路を手術中に温存し得て電気刺激にて筋電図が温存されたものは術後に再現性を持って運動麻痺を生じず、システム上の錐体路がほぼ実際の錐体路を反映していることが証明された。 また、錐体路近傍の脳動静脈奇形に対して定位放射線治療を行った52例において開発した統合システムを利用する前後の治療結果を比較検討した。その結果、システムを利用して意図的に錐体路の温存を意図した24例では、システム利用前の28例と比較して運動麻痺の合併症を優位に減少されることができたことが証明された。 副次的な研究結果として、PET画像を術中ナビゲーションに統合することの有用性や多種類の画像を統合する際の最適な融合画像の選択、神経膠腫に対するより効果的な定位放射線治療の方式などについても見いだした。
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