研究概要 |
悪性神経膠腫47例において、網羅的遺伝子発現解析の手法を用い、MGMTメチル化例と非メチル化例とで有意に発現量の異なる遺伝子を163遺伝子抽出した。その中で、特に両群間で発現量の異なったRobosomal Protein L(RPL)・Regulator of G-protein Signaling 5(RGS5)・Eukaryotic Translation Factor 3(eIF3)の3分子に注目し臨床像を含めて解析を行った。RPLはそのグループの中でRPL-4,-5,7,9,-15と5遺伝子がMGMTメチル化との相関を示したが、それぞれのRPLの発現量で症例を2群に分類して生命予後を比較すると、RPL発現量と生命予後との間に相関を認めなかった、RGS5も同様に、臨床像における有意性を認めなかった。一方、eIF3は、高発現例において生命予後が良好であることがCoxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析で証明され、これが乳癌におけるタモキシフェンとeIF3との関係に類似していたため、テモゾロミド感受性関与因子として期待された。そこで、テモゾロミド使用前後の腫瘍サンプルにてeIF3の発現量をreal-time PCR法で解析すると、テモゾロミド使用後においてeIF3の発現が高い傾向をしめしたものの有意差は得られなかった。また、テモゾロミド後再発例で化学療法耐性を獲得した腫瘍でも発現が更新していたことから、本腫瘍における化学療法感受性における本遺伝子の関与は懐疑的と思われた。 一方、MGMTメチル化の有無によるテーラーメイド治療では、MGMTメチル化例では照射線量を抑制しても、従来と同様の効果を維持しつつ、特に脳室周囲における放射線壊死と白質障害の軽減に寄与することが明らかとなった。
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