研究概要 |
1.グリオーマ幹細胞に対する候補化合物の作用の評価 前年度に引き続き、Glioblastoma手術摘出標本からneurosphere法を使用して樹立され、in vitroで3カ月以上sphere形態を維持して増殖可能なtumor-initiating cell(glioma derived cell:GDC)3ラインを解析対象として、対照細胞を神経組織由来神経幹細胞(NSC)3ラインおよびグリオーマ株化細胞4ラインに増やし、主に細胞増殖率評価(生細胞内ATP計測法)および細胞毒性評価(培養上清中LDH計測法)を使用して、グリオーマ治療標準薬(ACNU,TMZ,INF-β,VCR,PCZ)、その他の抗がん剤、さらに抗がん剤以外の用途で使用される各種薬剤の作用を評価した。その結果、GDCとNSCは共通してグリオーマ治療標準薬に一定の抵抗性を示すことを明らかにした。一方、その他の抗がん剤および抗がん剤以外薬剤の一部にGDCおよびNSCのいずれに対しても細胞増殖抑制および細胞死を引き起こす作用を有する薬剤が存在することを見出した。これら結果は、新規グリオーマ幹細胞標的薬の開発の可能性を示唆するものであり、当該研究課題の最大の目標を達成できたと考える。 2.候補化合物の作用メカニズム解析 GDCとNSCの薬剤抵抗性のメカニズム解析として、マイクロアレイ解析(Affymetrix GeneChip)、MGMT発現量解析、およびMGMTプロモーターメチル化率を各々評価した。その結果、NSCはMGMTプロモーターが高メチル化状態にあること、さらにGDCとNSCにおいては薬剤反応性関連遺伝子の発現に差異があることが明らかになった。これら結果は、ヒト神経幹細胞をモデル細胞として使用してグリオーマ幹細胞標的薬を開発する上で、重要な情報を与える成果と考える。
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