研究概要 |
【iPS細胞より誘導された神経系細胞によるハイブリッド型人工神経と自家神経移植群との比較検討】 実験系はこれまで同様にマウスを用いた末梢神経欠損部再建モデルを用いた。具体的にはマウス(オス12週齢、80-100g)を用いて、坐骨神経に5mmの神経欠損部を作成し内径1mm長さ7mmの人工神経で架橋した。架橋後12週目に坐骨神経を採取し、人工神経の中央・末梢端の横断切片についてHEおよびLFB染色を行った。神経の再生および血管の新生について、組織学的な評価項目は単位面積あたりの再生神経数、平均再生神経径、新生血管数、新生血管面積とした。 研究協力者である山中伸弥(京都大学・ips細胞研究センター長)の協力を得てマウス由来のips細胞より神経幹細胞から神経系細胞へと誘導した第2継代培養神経系細胞(Secondary Neurosphere細胞:以下SN細胞)を、長さ9mm、内腔1mmの前述の人工神経上に播種し生着させた。そして人工神経にSN細胞に播種させてから再度培養し、マウスの神経欠損部に移植し先述のように12週目に人工神経を採取した。 実験群としては、人工神経群(細胞付加なし)、ハイブリッド神経群(SN細胞付加)2群とした。 以上の群について、神経再生の評価を機能的及び組織学的に行った。機能的評価としてTFI(Tibial Functuinal Index)を使用した。組織学的な神経再生の評価項目は単位面積あたりの再生神経数、平均再生神経径、新生血管数、新生血管面積とした。これらについて自家神経と比較検討することによってSN細胞付加による神経再生促進効果を評価した。 その結果、人工神経群(細胞付加なし)に比べてハイブリッド神経群(SN細胞付加)では、移植後4,8,12週目のいずれにおいても統計学的に優位な差を認めた。すなわち、iPS細胞より誘導された神経系細胞は末梢神経再生を促進することが明らかとなった。
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