本研究は、坐骨神経痛モデルを用いて、脊髄後角におけるシグナル伝達分子の活性化とグリア細胞自身の形態変化、あるいはグリア細胞における疼痛関連分子遺伝子の発現変化(炎症性サイトカインを中心に)、さらには神経因性疼痛との関連を解明することを目的とする。今年度は、二種類の神経根損傷モデルを作成し(前根単独損傷モデル及び後根損傷モデル)その疼痛行動の計測、脊髄グリア細胞の変化について検討した。 1…疼痛関連動作(heat/cold hyperalgesia、mechanical allodynia)の確認:SD雄性ラットを用いて整形外科領域の坐骨神経痛モデルである2種類の神経根損傷モデルを作成し、疼痛関連動作(themal hyperalgesia、mechanical allodynia)を経時的に観察し、安定的に痛覚過敏を確認できるようになった。前根損傷モデルの方が安定して痛覚過敏が顕著に検出できることを見いだした。 2…脊髄後角におけるグリア細胞の活性化の確認:マイクログリアのマーカーであるIba-1、アストロサイトのGFAPの免疫組織化学法を施行した。両モデルにおいて、Iba-1、GFAPの上昇を確認することができ、特に前根損傷単独においてもグリア細胞の活性化が生じるという新しい発見があった。 3…リン酸化MAPKの増減の定量化:前根損傷モデルにおける術後1、3、7、14、21日目にL5レベルの脊髄後角を摘出し、ERK1/2活性化の指標であるリン酸化ERKI/2(p-ERK1/2)を検出して現在その定量化を行っている。
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