人工関節手術は年間約14万件以上行われているが、それにともない人工関節再置換術の頻度も増加している。再手術では骨欠損があり、それを充填することが必用である。海外では骨欠損部が大きい場合にはallograftを使用することができるが、日本ではallograftの供給源も少なく倫理的にも使用が煩雑である。生体材料の進歩により非荷重部の海綿骨の骨欠損に対してはある程度の対応が可能となったが、荷重部などの力学的強度を必要とする部分では使用が制限される。そこで本研究の目的は、CaO-SiO_2particleとpolyetheretherketone(PEEK)を用いて荷重部の骨欠損部に対して使用可能な新規生体材料を開発して評価することである。 変形性関節症患者から摘出したヒト骨様芽細胞とMC3T3細胞を、生体活性PEEK上および未活性PEEK上で3、7、21日間培養し、骨芽細胞分化マーカー(collagen_typeI、alkaline phosphatase、osteopontin、osteocalcin)のmRNA発現をリアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法にて検討した。MC3T3細胞とヒト骨芽様細胞の両方で、培養3日のosteopontinの発現が、生体活性PEEK上で亢進していた。生体活性PEEKおよび未活性PEEKで作製した板状片を7週令雄の白色家兎の脛骨の内側から外側に差し込み、4週、8週、12週で回収して引っ張り試験を施行した。経時的に両群間の引っ張り強度は増加したが、生体活性PEEKと未活性PEEKで有意差は見られなかった。脛骨の内側から外側に差し込んだ場合、骨と板材との接触面積が少なく、PEEK材では金属材料を用いたときのような十分な固定性を獲得できないことが両群間で有意差がみられなかった原因と思われる。大腿骨顆部などのように海綿骨の豊富な部分に埋入して実験を行うことが望ましいと考えられる。
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