研究課題
私たちは、これまで滑膜由来の間葉幹細胞が他の間葉幹細胞と比較し、自己血清でより増殖し、軟骨分化能が高いことを報告している。さらに滑膜間葉幹細胞の浮遊液を軟骨欠損部に関節鏡視下で10分間静置し、細胞を軟骨欠損部に接着させる、低侵襲な関節軟骨の再生医療を開始している。また家兎の検討で、移植する滑膜間葉幹細胞が多いほど、良好な軟骨再生が得られることを確認している。本研究では滑膜間葉幹細胞の浮遊液にマグネシウムを添加することにより軟骨欠損部への接着が増加し、軟骨修復が促進されることをこれまで示してきた。本年度の目標は、滑膜間葉幹細胞の浮遊液にマグネシウムを添加したものが、腫瘍化を促進するものではないか確認するために造腫瘍性試験を行なうことであった。ヌードマウスの皮下にヒト間葉幹細胞750万個を、5mMマグネシウムを含有するヴィーン3G輸液0.5mlに浮遊させ、皮下に移植した。ポジティブコントロール群として、線維肉腫細胞株HT-1080を同様の方法で皮下に移植した。1週毎の6ヶ月間に及ぶ観察で、線維肉腫細胞は皮下で腫瘍を形成し増大したが、間葉幹細胞は腫瘤を全く形成しなかった。
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