人工関節再置換術後などに生じる広範囲骨欠損修復に用いる同種骨組織へ骨形成作用を示す成長因子やホルモンを同種骨組織へ搭載させるために、平成21年度から融合タンパク質を作成し条件検討を行ってきた。平成21年度では、強い骨形成作用を示す副甲状腺ホルモン(Parathyroid hormone ; PTH)と細菌性コラゲナーゼのコラーゲン結合ドメインのみを有する融合タンパク質(PTH-CBD)を用いて、全身投与による骨形成作用について骨形態計測学的に検討したが、非融合タンパク質のPTHと比較して統計学的有意な差は認められなかった。そこで平成22年度ではラット骨移植モデルを用いてPTH-CBD非搭載骨移植群、PTH-CBD搭載骨移植群、非搭載骨移植+PTH局所投与群によるPTH-CBDの局所因子としての骨形成作用について検討したが、明らかな有意差は認められなかった。そこで、PTH-CBD以外の成長因子を含むコラーゲン結合ドメイン融合タンパク質の有用性について検討した。強い未分化間葉系細胞の増殖作用と骨形成作用を示す塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、および細胞増殖作用を示す(Epidermal Growth Factor ; EGF)それぞれにコラーゲン結合ドメインを有する融合タンパク質(FGF-CBD、EGF-CBD)を用いてラット骨移植モデルにおけるFGF-CBDおよびのEGF-CBDの骨組織へ効率よく搭載するための前処理として、脱灰処理の有無による作用変化について検討した。また、骨組織とFGF-CBD、EGF-CBDとの接触効率を増加させるために、ブロック状、プレート状移植骨をパーティクル状へ加工し、前処理の有効性につき検討した。その結果、Binding assayにより脱灰処理はFGF-CBD、EGF-CBDの双方に有効だった。また、形状加工は骨誘導能を期待した場合に比較的有効な手技と考えれらた。平成23年度ではFGF-CBD搭載骨組織により著しい骨形成作用を示すことが明らかになった。現在、本研究結果に基づき特願申請中(2011-108650、PCT/JP2012/057829)である。申請研究の一部である金属表面加工については、使用する金属サイズに限界があることが明らかになり、海外研究協力者によって新規技術開発がすすめられている。
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