研究概要 |
膝前十字靱帯(ACL)再建術後の移植腱と骨孔の固着の成否は、術後成績の向上を左右する重要な要素であり、これまで成長因子の局所投与などによる移植腱・骨結合部の再生の試みなどが行われているが、臨床応用に際しては、リコンビナント蛋白の作用の安全性の確認に長期間を要することやコスト面など克服すべき問題がある。そこで、我々は、独自に開発した骨と軟部組織の親和性に優れたチタン細繊維を円筒状に加工したチタンウェッブ(TW)を用いて、腱・骨結合部の再生が可能か組織学的に検討し、さらに、TW内の腱ならびに移植腱のコラーゲン基質の分化および成熟度を生化学的に解析したので報告する。 成熟New Zealand白色家兎の膝蓋腱外側(2x15mm)(PT)を採取し、TW(外径4mm,内径2mm)の内腔に誘導した。次に、脛骨内側から骨孔(径4mm)を作製し、TW/PT複合体を骨孔内に挿入したTW(+)群、さらに反対側も同様に処置を行い、骨孔(2mm)にはPT(2x15mm)のみを挿入したTW(-)群を各々術後、1,4ヵ月目に屠殺し、移植材料周囲の腱および骨組織を観察した。また、移植腱、TW内の移植腱と骨組織、TW外の骨組織を採取し、各々組織特異的な架橋パターン、成熟度を生化学的に解析した。 TW(-)群における術後4ヵ月の組織像では、骨孔内腱組織は粗造化しており変性所見を呈していたが、TW(+)群ではTW内に腱様組織および骨組織の侵入が観察された。コラーゲン分析の結果、TW(-)群の腱実質部コラーゲンは、架橋形成に乏しく、ペプシン可溶性も著しく亢進しており、組織の変性所見と一致した結果を示した。これに対して、TW(+)群の腱実質部、TW内腱様組織、骨組織の成熟度は健常組織と同程度であり、ペプシン可溶化率も低値であった。 以上より、骨と腱組織はTWを介して結合されることが確認された。さらに、骨や腱の主要な構成成分であるコラーゲンの成熟過程を阻害することなく、組織固有のコラーゲン架橋パターンを有する基質が形成されることが判明した。
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