研究概要 |
これまで我々は人工関節摩耗粉に対する骨溶解や周囲結合組織の脆弱化における生体反応機構に関する研究においてマクロファージを中心とした細胞性反応と破骨細胞性骨吸収機構を解析してきた。この一連の研究の過程で人工関節周囲の生体反応に自然免疫機構が関与することを示し、インプラント感染症におけるToll様受容体(TLR)を介した自然免疫応答の解析を行った。TLRは病原性細菌の菌体成分や自己構成成分を認識しNF-κβ, AP-1, caspase-1の経路を通してTNF-αやIL-1βの産生を誘導する。菌体成分を用いたリガンド刺激ではTLRを介したシグナル伝達間に促進的ないしは抑制的な相互作用が存在することが示された(Takagi M 2011)。またこれらの自然免疫系受容体を通した生体反応が種々の関連分子によって修飾されることも明らかとなりつつある(Takagi M 2011, Hirayama T 2011)。インプラント感染症ではバイオフィルム形成性の病態を示し、遷延化することも少なくない(Sasaki K 2009 ,高木2010)。この過程にTLRを含む病原体認識受容体を介した免疫応答が深く関与する可能性が示唆され(Takagi 2011)、同時に免疫応答調節分子の使用やインテリジェントマテリアルの併用によって、自然免疫応答を制御してインプラント感染症の発生、炎症の遷延化を抑制できる可能性が示されつつある(Takagi2011)。
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