本年度は骨吸収抑制薬剤であるカルシトニン、ビスフォスフォネートを作用させることによって破骨細胞内の空泡様構造における形態変化がどのように変化するか詳細な画像解析を中心に行った。 1.破骨細胞内の空泡様構造における形態変化:骨吸収時に特に活性の高いと思われる破骨細胞内においては多数の空胞様構造が出現するのが確認できた。骨吸収活性が高まりリン酸カルシウムコートを活発に破壊しているとき、細胞内においてその空胞様構造の分布に変化が現れ、特に大きな細胞に偏心性に偏って分布することが確認できた。この分布の変化は骨吸収活性の高まった破骨細胞に特有の変化であると思われた。次にこれらの活性を抑制した状態でこれらの空胞様構造の分布に変化が現れるか骨吸収抑制剤として臨床上最もよく用いられるカルシトニンとビスフォスフォネートを用いて解析を行った。カルシトニンでは破骨細胞の運動活性が低下するのが確認できたが、空砲様構造の明らかな変化はとらえることができなかった。ビスフォスフォネートにはリセドロネートを使用し、同様に破骨細胞の運動活性が低下するのが確認できたが、空砲様構造の明らかな変化はとらえることができなかった。これは濃度設定に問題があると思われ、今後の課題である。 2.また昨年に引き続き、破骨細胞の骨吸収過程における細胞内形態の動的変化、酸分泌機構を可視化するために、安定したアクチン染色による蛍光条件の確立と空胞様構造における形態変化の画像解析を行った。アクチン染色にはナノモルレベルでF-actinを蛍光染色できるAlexa Fluor 488 Phaloidinを用いた。波長励起、一波長蛍光、染色時間、染色濃度の設定の条件をいろいろ試してみたが、染色と蛍光強度の再現性が安定しなかったため、本年度内で骨吸収抑制剤投与下での蛍光観察を行うことはできなかった。
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