1、8週齢のC57BL/6マウスの一方の膝の内側側副靱帯、内側半月板を顕微鏡下で切除した。反対側の膝は皮膚のみ切開を行うsham operation controlとした。これを手術2、 4、 8、 12週後に屠殺し、X線撮影を行ったところ、臨床上見られる変形性関節症(OA)膝と同様の骨棘形成、関節裂隙狭小化、軟骨下骨硬化などを認めた。 2、手術2、 4、 8、 12週後の膝関節を採取し、これをパラフィン包埋し、HE染色およびSafranin 0染色を用いた組織学的評価を行ったところ、HE染色で経時的な軟骨の菲薄化、消失、軟骨下骨の硬化と破壊、滑膜の増殖など関節のOA変化を認めた。またSafranin 0染色では、染色性の低下を経時的に認め、このモデルでOAを経時的に再現できていると考えられた。 3、この関節から軟骨のみを採取し、液体窒素で凍結してhomogenizerで粉々にした組織からmRNAを抽出してPCRを行ったところ、II型コラーゲン、X型コラーゲン、SDF-1、 CXCR4の遺伝子発現を経時的に認めた。II型コラーゲンが全体的にやや減少傾向を見せたのに対し、X型コラーゲンは術後12週で増加していた。SDF-1は、手術時より徐々に発現の減少傾向を認めるが12週で増加していた。それに対しCXCR4は、手術時より2週で遺伝子発現の上昇を認め、経時的にやや減少する傾向を認めたが、いずれの時期においてもsham operationに比べて増加していた。 4、以上のことから、1)内側側副靱帯および内側半月板を切除することで、臨床上みられるOAを模したOAモデルをマウスで作成できた。2)OAモデルでは、II型コラーゲンの経時的な遺伝子発現の減少と、X型コラーゲンの上昇を認めた。3)SDF-1の遺伝子発現は、後期で増加するのに対し、CXCR4は初期で上昇し、徐々に低下する傾向があることがわかった。
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