研究概要 |
1、妊娠15.5日めのICRマウスから胎仔を採取し、この胎仔の中足骨を採取し、これから酵素処理で軟骨細胞を単離した。この軟骨細胞に、マウス由来のX型コラーゲンのreporter constructを導入した。導入したことは、BMP-2添加によるコントロール実験で確認したこれに、recombinant SDF-1蛋白を加えて、X型コラーゲンの遺伝子発現に、SDF-1シグナルがどのような影響を及ぼすかを調査した。マウス由来X型コラーゲンのreporter constructは、鹿児島大学より提供を受けた。その結果、SDF-1はX型コラーゲンの発現には影響を及ぼさないことが判明した。しかし、wild typeとSDF-1ノックアウトマウスから得られた中足骨では、X型コラーゲンの発現がwild typeのほうが強いことから、SDF-1は、X型コラーゲンの発現を直接制御するのではなく、軟骨細胞分化を調整することでX型コラーゲンの発現に影響している可能性が考えられた。 2、in vivoにおける関節軟骨でのSDF-1の働きをみるため、8週齢のC57BL/6マウスの一方の膝の内側側副靭帯、内側半月板を顕微鏡下で切除した。これを術後2、4、8、12週後に屠殺し、X線撮影を行ったところ、sham operationを行った反対側に比べて、患側では関節裂隙の狭小化、骨棘形成などのOA所見が見られることを確認した。また組織をパラフィン包埋し、HE染色およびSafranin O染色を行ったところ、関節軟骨変性が確認された。これをwild typeとSDF-1のヘテロノックアウトマウスで調べたところ、X線におけるOA変化、組織所見における関節軟骨変性に有意な差は見られなかった。 3,以上のことから、SDF-1は軟骨細胞の分化を制御するが、関節軟骨の変性には直接には関わっていない可能性が示唆された。
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