研究概要 |
肘離断性骨軟骨炎の病因・病態に局所の血行動態がどのように関与しているのかを明らかにするため、平成21年度より本研究を行っている。まず未固定遺体上肢標本を用いて小頭への栄養血管の解剖学的検討を行った。その結果、小頭への栄養血管は骨間反回動脈の枝で、小頭の後方内側よりで関節包付着部に接した部位から進入していることがわかった。また、その血管を超音波ドップラーで描出し血管抵抗を用いて間接的に血流量が計測できることもわかった。さらに肘離断性骨軟骨炎患者の血管抵抗と病巣修復の有無について検討し、修復例の血管抵抗は非修復例の血管抵抗より低く、栄養血管の血流量は病巣修復を決定する一因子である可能性があることを示した。 本年度は小頭骨端部への栄養血管血流を超音波で経時的に評価した結果を報告する。 対象は初診時にX線で小頭の骨端線が癒合時期にあり、6カ月以上超音波で血流を評価できた少年野球選手5名である。平均年齢は10歳7カ月(9歳2カ月~12歳0カ月)で、平均経過観察期間は13カ月(6カ月~28カ,月)であった。小頭への栄養血管をカラードップラで同定し,パルスドプラで記録した血流速波形から収縮期最高血流速度(Vs)および拡張期最低血流速度(Vd)、を測定し、血管抵抗係数resistance index (RI)=(Vs-Vd)/Vsを算出した。そして初診時と最終調査時でRIを比較した。初診時のRIは最低値0.49、最高値0.72で個人差が大きかった。また初診時と最終調査時のRIはそれぞれ0.57±0.04、0.56±0.05で差は無かった。以上の結果から、血管抵抗は個人差があり小頭骨端線の癒合時期では経時的に追跡しても変化は無く、小頭骨端への骨外からの血流供給は一定であることが示唆された。
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