研究概要 |
高脂血症治療薬であるスタチンを関節内に注射することによって関節軟骨の変性を抑制できることを、家兎を用いて検討を行った。 両膝前十宇靭帯切離を施行した日本白色家兎32羽を、メバスタチンの関節内投与量の違いで、無作為に次の3群に分けた:0.01mg/mL(n=8), 0.1mg/mL(n=16), 0.5mg/mL(n=8):メバスタチンは各濃度になるように生理食塩水に希釈し、体重あたり0.2mL/kgを片側の膝関節に関節内投与し、対側の膝関節には生理食塩水のみを投与しコントロール群として比較した。関節内投与を週に1回、合計6回行い、組織学的、免疫組織学的、生化学的に評価した。結果としては、コントロール群の膝では、軟骨の完全な欠損や中等度から高度の軟骨細胞の消失、サフラニン0での染色低下などの柔道の軟骨変性を認めた。一方、メバスタチンを0.1mg/mLと0.5mg/mLの濃度で関節内投与した両群では、コントロール群と比較して、組織学的な軟骨変性は軽度であり、軟骨変性抑制効果を認めた。しかしながら、メバスタチンを0.01mg/mLの低濃度で投与した群では、対側膝のコントロール群と比較してMankinスコアに有意差を認めなかった。メバスタチンは脂溶性で濃度依存的に細胞内に拡散し、競合的にメバロン酸経路を阻害するためスタチンの効果的な作用には、あるレベル以上を阻害できるスタチン濃度が必要であると考えられた。
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