研究概要 |
高脂血症治療薬であるスタチンを関節内に注射することによって関節軟骨の変性を抑制できることを、家兎を用いて検討を行った。両膝前十字靭帯切離を施行した日本白色家兎32羽を用いて、片側の膝関節にスタチンを関節内投与し、対側の膝関節には生理食塩水のみを投与しコントロール群として比較した。関節内投与を週に1回、計6回行い、組織学的、免疫組織学的、生化学的に評価した。結果としては、コントロール群の膝では、軟骨の完全な欠損や中等度から高度の軟骨細胞の消失、サフラニンOでの染色低下などの柔道の軟骨変性を認めた。一方、メバスタチンを関節内投与した群では、コントロール群と比較して、組織学的な軟骨変性は軽度であり、軟骨変性抑制効果を認めた。また、スタチンが滑膜細胞におけるMCP-1およびMMP-3の産生を抑制するか、in vitroでの実験を行った。家兎の滑膜細胞において、メバスタチン0,1,10,50μM含有のメディウムで前処置の後IL-1βを加え、MCP-1およびMMP-3の遺伝子発現、蛋白生成をRT-PCR、ELISAでそれぞれ評価した。50μMのメバスタチンの群で、MCP-1とMMP-3の遺伝子発現が抑制されており、蛋白生成も有意に抑制されていた。またヒト変形性関節症の滑膜細胞において、50μMのシンバスタチンで前処置を行った後IL-1βを加え、FFPおよびGGPPを添加することによるMCP-1の変化を計測した。シンバスタチンによるMCP-1の抑制効果は、FFPを添加しても抑制されたままであったが、GGPPを添加することで抑制がかからなくなった。さらに、RhoA kinase inhibitor (Y27632)の添加による前処置の後IL-1βを加え、MCP-1の変化をELISAで計測した。RhoA kinase inhibitorを添加したものでは、MCP-1は濃度依存性に抑制された。IL-1β刺激による変形性関節症滑膜細胞において、スタチンは、プレニル化、特にゲラニルゲラニル化の過程を阻害することによってMCP-1およびMMP-3を抑制することが可能であった。本研究より、Rho/Rho kinase経路の抑制が、スタチンによるMCP-1、MMP-3の抑制過程に関係している可能性が考えられた。
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