研究概要 |
関節軟骨損傷の自然修復過程に血流中の細胞が関与する可能性について、GFP transgenic Lewis ratとwild type Lewis ratのparabiosisという血流交換モデルを使って研究した。Parabiosisとは体の側面の皮膚を切開し、筋、皮下、皮膚を相手と縫い合わせるモデルであり、術後約2週で半分ずつの血流を共有した状態になる。27ペア作成したが3ペア死亡し24ペアで解析した。ペア作成4週後フローサイトメトリーで血流が共有されていることを確認した後、膝関節軟骨に径1.5mm深さ1mmの骨軟骨欠損を作成した。術後1, 2, 4, 24週(各群6ペアづつ)の免疫組織標本を作成し、欠損内の細胞の由来(GFPおよびwild rat別々に)を解析した。 欠損作成後1週では欠損部は線維性組織と少数の未分化な細胞で覆われていた。wild ratの欠損部に存在する未分化細胞の約30%にGFP陽性の細胞が認められ、GFP ratの欠損部にも約40%にGFP陰性の細胞が認められ、欠損部に血液由来細胞が存在することが明らかになった。欠損作成後2週では、欠損部を埋めていた線維性の組織が減り、分化した細胞成分が増加し、4週では欠損部が一部軟骨細胞で修復されていた。Wild ratではGFP陽性細胞は数%に、GFP ratではGFP陰性細胞は約30%に減少した。Wild ratの新生軟骨細胞はほとんどGFP陰性であったが一部GPF陽性細胞も存在し、血液由来細胞が軟骨修復に寄与している可能性が示唆された。24週では、欠損部の多くは軟骨組織で覆われるが、新生軟骨細胞はほぼ、wild ratはGFP陰性、GFP ratではGFP陽性の細胞であった。このことから、関節軟骨欠損自然修復の初期には、血流由来の可能性もある細胞が欠損部に動員されてくるが、修復された組織はほぼ自己由来の細胞で占められるということが明らかになった。
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