研究課題
本年度は、遺伝子改変動物(バゾプレッシン(AVP)-eGFPトランスジェニックラットおよびc-fos mRFPトランスジェニックラット)を用いて、急性疼痛ストレス時におけるeGFP遺伝子発現とeGFP蛍光の変化およびmRFP蛍光の変化を検討した。また、視床下部□下垂体□副腎(HPA)軸の変化についても検討した。結果は以下の通りである。(1)急性疼痛ストレスモデルとして5%ホルマリン液をAVP-eGFPトランスジェニックラットの後肢に皮下注射すると、注射後15分で血中AVP濃度が上昇し、2時間後には正常化していた。視床下部室傍核におけるeGFP mRNAレベルは注射15分後では変化を認めなかったが、2時間および6時間後では有意に発現が増加した。また、室傍核の大細胞群と小細胞群の両方でeGFP mRNAレベルが増加したが、特に小細胞群での増加が著明であった。室傍核におけるcorticotropin-releading hormone(CRH)mRNAレベルは注射2時間後に上昇したが、15分および6時間後では有意な変化を認めなかった。(2)室傍核におけるeGFP蛍光は大細胞群と小細胞群(CRH産生細胞が局在)の両方で増強し、小細胞群の増強が著明であった。また、下垂体後葉でも蛍光の増強が見られた。(3)急性疼痛ストレスモデルとして5%ホルマリン液をc-fos mRFPトランスジェニックラットの後肢に皮下注射すると、注射後90分で脊髄後角、ならびに視床下部室傍核と視索上核にFosタンパクが発現することを免疫組織化学的染色法で確認した。また、mRFP蛍光も注射90分後に脊髄後角や室傍核ならびに視索上核で観察された。以上の結果から、急性疼痛ストレスにおいてAVPはストレス応答に密接に関連しており、HPA軸の賦活化に重要な役割を担うことが2種類のトランスジェニックラットを用いて明らかとなった。
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http://www.nips.ac.jp/cellsensor/Ueda.pdf