研究課題
破骨細胞を介した関節リウマチ(RA)骨破壊の制御により、RAによる日常生活活動度の低下を予防することを最終目的とする。我々はこれまで破骨細胞骨吸収におけるミトコンドリアの役割を解析してきた。本研究では、ミトコンドリアで重要な役割をはたしているATP産生を維持するTfamに注目する。この遺伝子の破骨細胞特異的ノックアウトマウスを作製し、その骨破壊メカニズムを解析することにより、RA骨破壊制御への新たな筋道を見つけることを目的とする。昨年度は、Tfam flox/flox CatK-Cre+/-マウス(破骨細胞特異的コンディショナルノックアウトマウス:cKOマウス)の破骨細胞の解析を行った。Tfam cKO破骨細胞の延命は有意に阻害されており、破骨細胞においてミトコンドリアが自発的apoptosisに重要な役割を果たしていることが示唆された。意外なことに、このTfam cKO破骨細胞の生存期間が短くなるにもかかわらず、骨吸収機能は亢進していた。これにより、寿命の短い破骨細胞の方が、骨吸収という重要な機能が高まるという一見矛盾した結果が示唆された。Tfam cKO破骨細胞では、細胞内ATP量が低下していたため、この細胞内ATP濃度が、破骨細胞の延命・骨吸収機能に大きな役割を持っているのではないかと考えられた。一方、細胞内ATPから細胞外へリリースされたATPは、逆に破骨細胞骨吸収に阻害的に働いていることを明らかにした。細胞内ATP濃度と細胞外ATP濃度のバランスが、破骨細胞の延命・骨吸収機能に影響を与えていると考えられた。
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