本邦における病院外心停止(OHCPA)の救命率は極めて悪い。わずか2~4%程度である。OHCPAの救命率を改善し、完全社会復帰例をひとりでも増やすためには革新的な取り組みが不可欠である。本研究者はこれまで体外循環を用いた救命救急法および心肺蘇生法の研究を行ってきた。また、現在は救急搬送されてくる多くのOHCPAの救命に全力をあげている。従来の研究成果と現在の救急での経験から、心停止でも偶発的低体温症によるもの、治療抵抗性の心室細動や心室頻拍、目撃がある心停止で効果的な心肺蘇生法が施行されたものは直ちに経皮的体外式心肺補助法(PCPS)で呼吸・循環を補助すれば救命できる可能性が高い。そこで、これらの病態に対して、病院外で直ちに、簡便に利用できるPCPSシステムがあればこれらの患者を救命できる可能性は高い。しかし、現在、簡便に利用できるPCPSシステムはない。そこで、本研究では、病院外で誰でもすぐにPCPSを施行できる携行式体外心肺蘇生(portable external cardiopulmonary resuscitation : PECPR)システムを作成し臨床応用することを考えた。このPECPRシステムを用いて、OHCPAの症例に対してケースの蓄積を考えた。症例蓄積のためには、ドクターカーシステムをキーワード方式とし、病院外へ医師が飛び出していくシステムの整備が不可欠である。今後、本研究者の地区で運用しているドクターカーシステムの改善を含め、病院外救急医療体制の制度設計を改善することで、本研究終了後も症例蓄積を継続する。
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