術中の疼痛除去を目的にした全身麻酔では吸入麻酔は持続投与され血行動態が抑制されないように濃度を決定するが、心筋保護を標的として投与する際の吸入麻酔薬の最適投与法については、特にどのような時期にどの程度投与するか未だ明らかでない 近年、麻酔薬による多くの心筋保護効果についてミクロからマクロ、さらに臨床応用へと研究が進められ、証明されつつある。しかしながら、この内容を精査すると、動物を用いた研究では多くの吸入麻酔薬の利点は見いだされているが、臨床における研究での効果についてはまだ結論が出ていない。とくに我々が実際に使用する際の吸入麻酔薬の心保護効果を目的とした有効な使用法については十分な情報が得られていない。我々はラット心筋に対し、吸入麻酔薬(セボフルラン)を1MACで15分間曝露した後、あるいは実験中すべての時間暴露している状態で、30分間の冠動脈閉塞期と60分間の再灌流期の間15分ごとに透析液ミオグロビン濃度を測定した。その結果、虚血前投与群において透析液ミオグロビン濃度上昇をより強く抑制することが確認できた。この系をさらに発展させて、セボフルランによる冠動脈閉塞後の心筋バイアビリティに及ぼす影響について検証できるかどうか確認しているところである。最終的には虚血再灌流期および虚血後の残存心機能に対して投与量・投与のタイミングによる影響を検証し、そのメカニズムを明らかにしていきたい。
|