当教室は悪性高熱症の素因検査であるCa-induced Ca release (CICR)テストを施行している。この余剰筋肉を培養し、カルシウム指示薬のFura-2AMを負荷して骨格筋細胞内Ca濃度の測定を行っている。全身麻酔中にも使用頻度が高い循環作動薬であるカルシウム拮抗薬の悪性高熱症に対する影響を調べるために、各種カルシウム拮抗薬を投与して骨格筋細胞内のCa濃度の変化を調べた。カルシウム拮抗薬は、骨格筋では反対に筋小胞体(SR)からCaを放出させ、細胞内のCa濃度を上昇させることを確認した。カルシウム拮抗薬はカルシウム受容体(DHPR)に結合し、DHPRがリアノジンレセプター(RYR1)とカップリングするという骨格筋特有の機構により間接的にRYR1に反応する結果、SRからCaを放出させると推測される。悪性高熱症はカルシウム代謝を異常亢進させることが病因ではあるため、素因者に対しては全身麻酔中のカルシウム拮抗薬投与は望ましくないことを確証した。この研究結果は国際学会で発表し、現在論文作成中である。 悪性高熱症のカルシウム代謝異常はSRが主体とされていたが、近年、DHPRからのCa流入(ECCE ; Excitation-Coupled Calcium Entry)が注目されている。そこで、新しい局所麻酔薬や頻用されている吸入麻酔薬について、ECCEを検討する予定である。 尚、骨格筋培養の清潔操作に必須であるクリーンベンチが使用不能となり、新規購入が必要となった。クリーンベンチが高額であるため予算不足を生じる結果となり、ポンプ等を当初の計画より低予算の規格に変更し、パソコン等も既存の物を継続使用することにした。
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