前年度は自然発症2型糖尿病ラット(OLETF)と対照ラット(LETO)から得た胸部大動脈標本を用い、内皮依存性血管弛緩反応に及ぼすスタチンの影響をみた。その結果、糖尿病ラット血管ではアセチルコリン刺激による内皮依存性弛緩反応が減弱しており、シンバスタチンはその反応を部分的に回復させた。 この結果を受け、本年度は培養血管内皮細胞を用い、一酸化窒素(NO)産生に及ぼすシンバスタチンの影響を検討した。 1) OLETF、LETOラットから大動脈標本を摘出し、20%FBS-DMEM溶液に浸し、Collagenase(2mg/ml)を含んだDMEM溶液で内腔を灌流することにより、内皮細胞を含んだ溶液を採取した。 2) 遠心分離により内皮細胞を分離し、抗生剤を含んだ20%FBS-DMEM溶液中で培養する。 3) コンフルエントになった細胞をカバーグラスにに移し、24時間後蛍光NO指示薬であるDAF-AMに暴露し、共焦点顕微鏡を用いて観察した。 【結果】ブラジキニン刺激により内皮細胞内NO産生量は増加したが、OLETFラット由来の細胞ではその増加はLETOラット由来の細胞に比べ抑制されていた。 シンバスタチン(10^<-6>M)で15分間細胞を前処置すると、OLETFラット由来の細胞でみられたNO産生量の低下は部分的に回復した。シンバスタチン前処置はLETOラット由来の細胞のNO産生には有意な影響を与えなかった。 以上の結果より、シンバスタチン急性投与は糖尿病ラット血管内皮細胞におけるNO産生能を回復させることにより、内皮機能の改善を来すことが明らかとなった。
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