前年度までは、自然発症糖尿病ラット(OLETF)と対照ラット(LETO)から得た胸部大動脈標本におけるアセチルコリン刺激による内皮依存性弛緩反応を比較し、糖尿病ラットにおける内皮依存性弛緩反応が減弱していること、およびその減弱がシンバスタチンによって部分的に回復させられることを確認した。さらに各ラットより得た大動脈から単離した血管内皮細胞を培養し、ブラジキニン刺激によるNO産生量変化をシンバスタチン適用の有無により検証したところ、糖尿病ラットにおけるNO産生量低下がシンバスタチンにより部分的に回復させられることを確認した。 この結果をうけ、本年度は糖尿病におけるスタチンによるNO産生能回復効果の機序を検証した。上記同様OLETFラットおよびLETOラットから単離した培養血管内皮細胞にシンバスタチンを適用したのち、アセチルコリンを適用した。その後BD Phosflow^<TM> Lyse/Fix Bufferを用いて細胞を固定し、BD Phosflow^<TM> Perm Buffer IIIを用いて細胞膜透過処理を行い、蛍光標識抗体である抗リン酸化AKTモノクローナル抗体で細胞を染色したのち、フローサイトメーターによる解析を行った。LETOラットとOLETFラットでは、AKTのリン酸化はLETOラットで高頻度であり、OLETFラットでは抑制されていた。しかし、シンバスタチンの適用は、OLETFラットにおける活性化AKTの発現率に影響を与えなかった。
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