研究概要 |
肺障害の成因または進展を細胞の低酸素誘導性遺伝子応答の観点から細胞生物学的また分子生物学的に理解して肺障害治療法の評価を新たな観点から行い、また新たな治療法の開発の基礎的な知見を得ることが本研究の目的である。すでに提出済の実験計画に基づいて本年度は以下の研究成果を得た。 #1タバコ抽出液が肺胞上皮機能に与える影響の検討について II型肺胞上皮細胞のモデル細胞として頻用される樹立細胞株A549細胞を用いたタバコ抽出液(CSE)への暴露モデル,マウスを用いた喫煙モデルを用いて、タバコによりhypoxia-inducible factor 1(HIF-1)の強い活性化が起こることを見いだしていた。 今年度はその活性化機序の分子機構について解析を行い,ニコチンまたはアクロレイン依存性の経路とそれ以外の経路が存在することを明らかにした。また活性酸素がこの活性化において重要な役割を果たしていることを見いだすと共にこの活性化がHIF-1a蛋白質の細胞内安定化によるものというよりはHIF-1a蛋白質のmRNAからの翻訳過程を促進する機序でHIF-1aの発現増強とHI(F-1の活性化をもたらすことを明らかにした。 また脳、腎臓など肺以外の臓器への影響の検討を行った。少なくとも神経由来細胞においてはタバコによるHIF-1の活性化が起こる事を明らかにした。 またさらにHIF-1依存的にタバコ暴露により活性化を受ける遺伝子としてREDD1を同定してCOPDの成立におけるHIF-1の役割についての解析に着手した。
|