目的:手術後疼痛に対してニューロステロイドの関与の程度を検討する目的で、手術創モデルラットの中枢神経におけるアロプレグナノロンの産生量を免疫組織染色を用いて測定することとした。しかし、定量分析可能なレベルの染色は困難であったため、アロプレグナノロンの合成酵素阻害薬を用いた行動学的な研究に変更した。当初予定していた3α-hydroxysteroid oxido-reductase抑制薬Proveraは、逆にアロプレグナノロンが上昇するという文献もあり、Finasterideを用いることにした。 方法:6-7週齢雄のSprague-Dawleyラットを対象とし、Finasteride(17αN-t-butyl carbamoy1-4-aza-5α-androst-1-en-3-one)50mg/kgを腹腔内投与する投与群と、溶剤のみを投与する対照群の2群に分けた。薬液投与60分後、セボフルラン吸入麻酔下に足底皮膚切開(Brennanらの方法)を施行し手術後疼痛モデルを作成した。1週間後、von Frey filamentsによる機械刺激に対する逃避行動と患肢に対する加重の程度を観察した。 結果:Brennanらの結果および我々の昨年度施行した追試の結果1週間後の機械刺激に対する逃避行動は対照値とほぼ同じ値に回復している。しかし、今回Finasteride投与群では1週間後も機械刺激に対する反応は過敏であり、これはアロプレグナノロンが痛覚過敏の発生を抑制している可能性を示唆している。今後は、Finasteride投与群でのアロプレグナノロンの低下の程度を定性的に確認するとともに、痛覚域値の経時的変化を観察したい。
|