ニューロステロイドであるアロプレグナノロンが術後痛に対してどのような効果を果たすかをBrennanのラット術後痛モデルを用いて調べた。 1. 術後疼痛モデルにおけるアロプレグナノロンの関与の検討:通常Brennanの手術創モデルでは、7日後の機械的アロデニアはほぼ対照値に回復してくる。しかし、アロプレグナノロンの合成酵素阻害薬であるフィナステロイド投与群では約40%疼痛閾値が低下していた。これは、アロプレグナノロンが術後の痛覚過敏の発生を抑制している可能性を示唆している。 2. アロプレグナノロンの手術創に対する鎮痛効果の検討:アロプレグナノロン低用量(0.16mg/kg)と高用量(1.6mg/kg)を投与した場合、低用量群は2と24時間後に有意に機械刺激に対する閾値が高くなっていた。これは、アロプレグナノロンの痛覚過敏抑制のメカニズムが単一ではないことを示唆している。 3. アロプレグナノロンと他の鎮痛薬の併用効果に関する検討:アロプレグナノロンとインドメタシン(1~10mg/kg)の単回投与では効果がなく、持続投与では消化性潰瘍が発生して十分な鎮痛効果は確認できなかった。アロプレグナノロンとアセトアミノフェン(300mg/k/日)併用ではアセトアミノフェン単独群に比較して12と36時間後に有意な閾値の上昇が認められたが、全体的に閾値の低下があり、複数回の薬液経口投与がストレスになったことが推測された。ガバペンチン(100mg/kg)とアロプレグナノロンの併用では、僅かな相加的効果が認められた。 上記結果をまとめると、本研究の究極の目的である「術後疼痛対策の裾野を広げる」という目標はほぼ達成され、実施計画内容もほぼ全て遂行された。アロプレグナノロンの鎮痛の程度は予想より軽微であったが、一部の患者で慢性痛に移行してしまう手術後疼痛の解決に向けての貴重な一歩となったと考えられる。
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