本年度は、口鼻分離マスクによりそれぞれの呼吸経路を別々にあるいは同時に陽圧人工呼吸し、それぞれの呼吸経路の換気量を独立して測定できるシステムを構築することに成功した。この研究システムの構築によって研究実施計画で予定した『最適な気道確保方法とその限界の検討』に関する研究を開始することが可能となった。現在、中間解析ではあるが、マスク換気時の優位な呼吸経路は患者ごとに異なり一定でなく、頭部後屈や下顎挙上などの気道確保に対する反応も患者により異なり一定でないことが明らかとなった。さらに興味深いことは、筋弛緩薬投与により、優位な呼吸経路は変化するがマスク換気難易度は決して悪化することなく、特に肥満患者では換気が改善することが明らかとなった。これらの研究結果は、研究計画時の予想に一致する部分もあるが、マスク換気時の優位な呼吸経路の多様性は予想に反するものであり、そのメカニズム究明のため、内視鏡を用いた咽頭気道閉塞性や閉塞部位との関連性を今後調べる必要があると考える。さらに、筋弛緩薬に対するマスク換気難易度変化の結果は、全身麻酔導入時の気道管理方法に大きな影響を与える可能性のある発見と考える。現在までの研究成果は、2011年の日本麻酔科学会総会とヨーロッパ麻酔科学会で発表する予定となっている。
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