樹状細胞は抗原提示細胞として重要な役割を担っており、樹状細胞がリンパ球の活性化に影響し、免疫反応の方向付けを決定することが明らかになっている。プロポフォール中枢神経系への影響は詳細に行われてきたが、免疫系に対しての影響の解析は極めて少ない。プロポフォールの樹状細胞に対する影響に関する検討は極めて少ない。申請者らはプロポフォールの樹状細胞の機能への影響を詳細に調べた。 マウスの骨髄由来の樹状細胞(BM-DC)を樹状細胞の対象として用いた。骨髄よりGM-CSFを用いて樹状細胞を誘導する際にプロポフォールの存在下に骨髄由来の樹状細胞を誘導させると、樹状細胞への分化が抑制されて、CDllbとLy-6Cの陽性の単球が増加してくることを見出した。この現象は暴露するプロポフォールの濃度と時間に依存して変化することを見出した。これはプロポフォールが骨髄にいる単球から樹状細胞への分化の過程に影響をあたえる可能性を示唆している。 次に、この現象をより詳細に明らかにするために骨髄に存在する単球のみをフローサイトメーターによる細胞分取によって精製して、精製された単球から樹状細胞への分化を観察する実験系を確立し、細胞分化過程にプロポフォールがどのように作用するかを検討している。 更にプロポフォール存在下に分化してきた樹状細胞の性質を、樹状細胞のみを磁気分離カラムによって精製して解析すると、プロポフォールによって樹状細胞上のT細胞共刺激分子と主要組織適応抗原の発現が上昇することが観察され、プロポフォールは樹状細胞機能に対しては刺激的に働くことが示唆された。
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