研究概要 |
本研究の主眼は疼痛のニューロモジュレータとして機能する脳由来神経栄養因子(BDNF)のエクソンに注目し、エクソンの転写を抑制するデコイを作成し、難治性疼痛治療の基礎を確立することである。 本年度は痛モデルの脊髄後根神経節(DRG)で過剰発現するエクソンの転写調節領域を特定し、転写を抑制するDNA配列(DNAデコイ)を作成することを目標とした。 過去の我々の研究で、疼痛モデルにおいてBDNFエクソン1が著明に増加していることを報告した(Biochem Biophysres Commun 362 : 682-8, 2007、Brain Res 1206 : 13-9, 2008)。エクソン1について、その転写調節領域を特定し、その後他のエクソンでも特定した。 まず、エクソン1とその上流領域を3つの領域(短、中、長)に分割し、転写に関係している重要部分の大凡の検索を実施し、それぞれの領域を持つフラグメントを組み込んだプロモーターアッセイ用プラスミドをセンス、アンチセンスの方向で作成した。その後、C6細胞へのプラスミドの導入でのルシフェラーゼ活性を測定し、最も反応の強い部分を特定した。 上記で特定した転写特定領域で転写を抑制するDNA配列(DNAデコイ候補)を現在デザインしている。 以上の結果は、国際学会:2009年度アメリカ麻酔科学会(Anti-Nociceptive Effect of Decoy ODN Inhibiting BDNF in Rat Inflammatory Pain Model)および31回日本疼痛学会(ラット炎症性疼痛モデルにおけるBDNFノックダウンデコイの疼痛抑制効果)で発表した。
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