研究概要 |
肺移植の術後管理において,気道過敏性亢進により呼吸管理に難渋する症例がしばしば見られる。その原因として移植肺は脱神経という特異な状態にあることがあげられるが,それだけでなく,移植肺局所において気道過敏性亢進を生じさせる機構が存在することを示唆する報告も散見される。 本研究はこの肺移植術後の気道過敏性亢進のメカニズムを解明し,制御法を確立することを目的に行っている。 肺移植術後管理で投与される薬剤のうち,筋弛緩薬の新規拮抗薬スガマデクスに気道過敏性亢進の報告が見られるため,このスガマデクスが気道平滑筋収縮に与える影響を調べた。 新規筋弛緩薬拮抗剤スマガデクスがラット気管支における等尺性張力に与える影響 雄性Wistar系ラット(12週)から左主気管支輪状切片を作成しKrebs-Henseleit液を含むオーガンバス(10mL)に設置した。安定静止張力(1g)を得た後に以下のプロトコルで等尺性張力を測定した。 (1)スガマデクス(0.01μM-1mM)を累積投与した(n=6)。(2)2標本を用い一方にスガマデクス(10μM)、他方に溶媒を与えた後、アセチルコリン(ACh)(0.1μM-1mM)を累積投与した(n=6)。(3)2標本を用い、ACh(30μM)による収縮に対して一方にスガマデクス(10 or 100μM)、他方に溶媒を与えた(n=6)。 結果、(1)スガマデクス単独では有意な収縮は見られなかった。(2)スガマデクスはAChの濃度反応曲線に有意な影響を与えなかった。(3)スガマデクスはAChによる収縮に有意な影響を与えなかった。以上よりスガマデクス単独で気管支平滑筋収縮を発生、増強することはないと考えられた。 論文投稿準備中。平成24年6月日本麻酔科学会総会(神戸)及び平成24年10月米国麻酔学会にて発表(予定)。
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