研究課題/領域番号 |
21592015
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
川崎 康彦 関西医療大学, 保険医療学部, 研究員 (50535755)
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研究分担者 |
中塚 映政 関西医療大学, 保険医療学部, 教授 (30380752)
河野 達郎 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00313536)
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キーワード | 脊髄後角 / spare nerve injury mode / グリア細胞 / グリシン受容体 / NMDA受容体 / D-serine / パッチクランプ / グリア由来伝達物質 |
研究概要 |
末梢神経障害によって慢性的な痛みを発症させる神経障害性疼痛の治療は、原疾患の克服のみならず多くの罹患者における生活の質(QOL)、日常生活動作(ADL)の改善のために極めて重要である。しかしながら、神経因性疼痛のメカニズムは未だ解明されておらず、確立された治療法も見つかっていない。本研究では、痛み情報伝達にに重要な役割を果たしている脊髄後角に焦点を当て、末梢神経障害によるグリシン受容体を介した応答が情報伝達修飾に及ぼす影響を調べ、この作用がいかに中枢性感作の誘導、発生に関わっているかその機序について詳細に調べることを目的とする。 平成21年度の実験結果より、GlyTの脊髄後角における効果は顕著でなかった。平成22年度は生理的状態におけるD-serineの灌流投与を脊髄横断スライスに行った所、グリシン受容体を介する応答(外向き電流)が観察された。平成23年度の実験では、さらにモデル動物(spare nerve injury model)を作製し、同様にD-serineの及ぼす効果を電気生理学的に調べた。モデル動物の脊髄後角細胞における効果は興奮性応答でのNMDA受容体誘起内向き電流の振幅は生理的状態のそれと比較して有意に大きいものであった。更に、抑制性応答のグリシン受容体誘起の外向き電流応答についても同様な実験を行った所、SNIモデル動物脊髄後角細胞での外向き電流の振幅は生理的状態と比較してい有意に小さいものであった。以上の結果をまとめると、D-serineは抑制性であるグリシン受容体を介する電流を発生し、脊髄後角神経細胞の応答を抑制する働きをもつ一方、興奮性のNMDA受容体にも働き、興奮性応答の修飾にも働くことが示唆された。さらに神経傷害性疼痛時では、このD-serineの効果は興奮性応答をより強く、抑制性応答をより減弱させることから、生理的状態と比較して、痛みにより過敏の状態が形成されていくことが示唆された。
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