研究概要 |
ホスホジエステラーゼ(PDE)は,サイクリックAMP(cAMP)やサイクリックGMP(cGMP)を代謝する細胞内酵素として重要である。PDE3阻害薬が喘息患者で,あるいはモルモットでの抗原誘発性気道収縮に対して有効に作用することが報告されている。今回の研究では,PDE3阻害薬オルプリノンと吸入麻酔薬セボフルランとの相互作用を観察し,臨床応用の可能性について検討した。雄のHartleyモルモットを使用した。喘息モデルは異種蛋白オバラミンによって作製した。オバラミンを腹腔内投与し,さらに2週間後にオバラミンを吸入させた。コントロール群には生理食塩水で同様の操作を行った。ウレタンによって麻酔を行い,気管切開下に入工呼吸器で換気した。右頚静脈に静脈路を確保した。胸腔内圧は食道内に留置したカテーテル圧で代用した。胸腔内圧と気道内圧の測定から肺抵抗とコンプライアンスを測定した。気道過敏性はアセチルコリンの静脈内投与によって確認した。呼気終末濃度が1.0%となるように吸入麻酔薬セボフルランを吸入した。気道抵抗が一定した後,オルプリノン,ミルリノン,テオフィリン,ならびに生理食塩水を静脈内投与し,気道抵抗の変化を観察した。この状態でさらにアセチルコリンを負荷し,コントロール値と比較検討した。アセチルコリンに対する気道抵抗の上昇は,喘息モデルで有意に高かった。肺コンプライアンスは喘息モデルでアセチルコリンを負荷する以前から高かった。結果的に,オルプリノンの併用が最も効果的に気道抵抗を減弱させ,また肺コンプライアンスを増加させた。喘息をもつ患者の麻酔管理として,強力な気道平滑筋弛緩作用をもつセボフルランを利用するのはもちろん,PDE3阻害薬としてはオルプリノンの方がミルリノンよりも優れた相加効果を示す一方,テオフィリンの併用は何ら効果を示さないことが示唆された。
|