平成21年度の計画では、「逆向性染色法」を用いた特異的な感覚神経の同定と、「パッチクランプ記録法」で侵害受容器のカプサイシン受容体の働きを調べる予定を立てていた。麻酔・危機管理学にある独自のセットアップを使用し、効率的に実験を進めている。また、神経分泌能の指標としての血管拡張作用をとらえるため、行動実験に用いる赤外線カメラ(サーモグラフィー)を購入し、記録設備とともに準備段階に入った。1)足底に分布する神経の同定;麻酔下において、ラットの足底部分に、DMSOで溶解したdicarbocyanine dye DiIを2μ 1注入する。DiIが脊髄後根神経節細胞まで逆向性輸送されるまで、1~2週間待つ。脊髄後根神経節を取り出し、コラゲナーゼ、トリプシン処理後、神経細胞を単離培養し、細胞体に逆向性軸索移動したDiIを、特殊フィルターを用いた顕微鏡下で観察し、足底部分に分布する一次求心神経を同定中である。培養系は問題なく、これまでに同様の方法で内臓感覚神経の同定は確立できているが、足底に分布する体性感覚神経の同定に関しては、まだ安定した結果が出ない。2)パッチクランプ記録による皮膚侵害受容器における痛覚受容に関わる受容体・イオンチャネル、特にカプサイシン受容体を含め、その性質を明らかにしている。予備的実験として、非特異的な感覚神経を用いて、パッチクランプ記録を行なっている。培養後根神経節細胞(感覚神経)を用いた実験では、酸(プロトン)に対する反応から、異なるpHに反応する数種類の酸感受性が認められており、虚血組織、炎症組織でのこれらの感覚神経・イオンチャネルの関与が示唆される。
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