研究概要 |
平成22年度は、電気生理学的手法を用いて、神経の興奮性すなわち、皮膚侵害受容器における痛覚受容に関わる受容体・イオンチャネルの性質を明らかにすることを目的に実験を進めてきた。パッチクランプ記録法を用いて、イオンチャネルの開口変化の検討には電位固定で、神経興奮性の実験には電流固定でおこなっている。侵害受容に関わるイオンチャネルの中でも、カプサイシン受容体と酸感受性イオンチャネルの薬理学的性質を調べており、さまざまな代謝型の受容体を介して興奮性を増すことがこれまでに分かってきた。しかし神経障害がこれら代謝型の受容体を介するものかはさらなる検討が必要と考えられる。そこで新たな研究手段として、組織中の微少濃度を測定する微小透析法を用いて、組織中のCGRPやSPの濃度を測定することを考えている。また、神経障害性疼痛モデル動物の神経興奮性の増大が電気生理学的実験で検証するのに平行して、神経伝達物質分泌能の亢進を検証している。ドップラー血流計・サーモグラフィーを用いた侵害受容神経の興奮性の検討では、侵害受容神経の神経伝達物質(SP, CGRP)分泌機能の評価を、血管拡張を指標として行っており、カプサイシン刺激によりドップラー血流計でとらえられる血流量増加を確認できているが、変化量が少ないため、サーモグラフィーでの測定方法での検討を加えている。侵害刺激を行った後の変化や、神経障害性疼痛モデルにおける反応性の増大は現在検討中である。
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