方法および対象:日本人および米国人のデータはUCLA David Geffen School of Medicine泌尿器科Litwin教授の協力のもと日本人及び米国人前立腺癌患者QOLデータベースを使用した(日本人447例、米国人427例)。日系米国人のデータはQueen Medical centerで前立腺癌と診断された日系米国人を対象とした。そのために2009年1月にハワイに赴き研究グループを立ち上げた。 QOL面の評価ツールは身体的及び精神的QOLについてはMedical Outcome Study Short Form 36、尿失禁、排便及び性機能の評価にはUCLA Prostate Cancer Indexの自己記入式調査票を用いて評価した。 結果:これまでに412例の米国人、352例の日本人、75例の日系米国人が研究対象となった。身体的QOLでは日系米国人は2群に比較して高かった。排尿及び排便のQOLでは違いが見られなかった。性機能では米国人が最も高かった。日系米国人の性機能は日本人と米国人に比較して低値だが日本人と比較すると高値だった。性負担感の項目では日本人及び米国人は高値を示し有意差を認めなかったが、日系米国人は両群に比較し低値を示した。日系米国人のパートナーが日系人およびそれ以外の人種の2群にわけて日本人前立腺患者のQOLと比較した。その結果性機能においては両群に有意差を認めなかった。しかし日系人をパートナーに持つ群は他の人種をパートナーに持つ群に比較して性負担感の項目は高値であった。 結論:質問票による評価では全体的QOLに人種間は認めなかづたが性的QOLに大きな相違を認めた。具体的には性機能は米国人>>日系米国人>日本人の順となっていた。一方性機能に対する性的負担感は日本人=米国人>日系米国人となっており日系米国人の性的能力に対する負担が大きいと考えられた。性負担感は患者自身の性機能だけでなく、パートナーの影響が示唆された。今後治療後の変化についての解析を進めていく予定である。
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